亡くなった後の手続きなど

死後事務委任

意思決定支援(ACP、AD、LW、終末期、尊厳死宣言)、死後事務委任契約

介護高齢者

高齢者の方のための「終末期支援」とは

高齢者の方のサポートをしていく中で、終末期のサポートは重要な業務の一つであります。 高齢者の終末期となると、多くの慢性的な疾患をきっかけに、いつ急変してもおかしくない状態です。 しかし、高齢者の方々は激動の昭和をくぐり抜けてこられ、多くの経験を経てきた方々、最期は「もうどうでもいい」と放っておいて欲しいと言われる方もいるでしょう。 しかし、現実的に最期はさまざまな処理をおこなわねばならず、実際に葬儀や埋葬は誰が行うのかを考える必要があります。相続人がいれば良いのですが、いない場合は市役所が担当することになり、とても質素なものになってしまいます。 ご本人様が、どのような最期を望まれ、実現させてあげられるかがいかに重要です。

AD(アドバンスディレクティブ)(Advance Directive)
アドバンス・ディレクティブとは、将来自らが判断能力を失った際に、自分に行われる治療やケアに関する意向を前もって意思表示することです。 アドバンスディレクティブでは、前述のような場合に備えて、事前に代理人として家族や友人を指示して、自分の代わりに治療やケアの内容について医療・介護従事者と話し合ってほしいと依頼をしておくことができます。 また、あらゆるケースを事前に想定して具体的に意向を示すことは困難なため、アドバンスディレクティブによって指定された代理人は、治療やケアの内容について、医療・介護従事者と話し合うことになるでしょう。 アドバンスディレクティブの代理人を選ぶことは重要な課題であるといえます。
アドバンスディレクティブは、事前指示書として以下のような意思表示をします。
(1)気管挿管、人工呼吸器の使用、心肺蘇生、集中治療室での治療など、大きな負担を伴ったとしても長く生きることを重視した治療を受けたいのか
(2)気管挿管、人工呼吸器の使用、心肺蘇生、集中治療室での治療など、大きな負担を伴う処置は希望せず、その中でも長く生きる治療を受けたいのか
(3)延命効果を期待する治療をおこなわずして、できる限りの苦痛緩和、快適な暮らしを大切にした治療を受けたいのか
必ず意志通りに実行されるわけではありませんが、医療側の意向と患者側の意向が大きく食い違うことを避け、患者の意向を尊重することができます。
アドバンスディレクティブとリビングウィルとの違いについて
リビングウィルとは、英語の直訳では「生前の意思」という意味で、「生前に発効される遺書」のことです。病気や事故で意思表示できなくなった際、自分に行われる治療やケアへの意向を、意思表示ができるうちに伝えておきます。 アドバンスディレクティブとの違いとしては、「代理人の指定」が含まれないことです。 前述のとおり、意思表示ができなくなったときの治療やケアにおいては、代理人が役割を果たすことになります。 なので、リビングウィルよりもアドバンスディレクティブを残すことを強くお勧めします。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは?
英語の直訳では「事前ケア計画」という意味で、患者・家族と医療従事者、介護提供者などが、患者の意思表示の能力が落ちる前に、今後の治療やケアについて話し合い、意思決定する人を決めておくプロセスのことです。(「人生会議」という愛称が付けられています) アドバンスケアプランニングは、以下の流れで行われます。
1.治療する際に大切にしたいことを考える
2.患者に代わり、意思決定する人を選ぶ
3.医療従事者、介護提供者に相談する
4.実際に希望する治療やケアについて家族らで会議をおこなう 5.会議の内容を記録する

死後の事務作業

死後事務委任契約とは

いま話題の、「死後事務委任契約」をご存知でしょうか? 人が亡くなった後、様々な事務手続きが発生します。例えば、葬儀の主宰や役所での行政手続き、病院代等の清算、公共サービスの解約等が挙げられます。 通常、これらの事務手続きは家族や親族が行うことが一般的です。 しかし、現代においては、高齢化社会が進み、子供がいない夫婦が増える等、身寄りがいない方の場合、その作業をしてくれる人は誰もいなくなります。亡くなった後、この死後事務を行う方が誰もいないというケースが増加しています。
「死後事務委任契約」は、亡くなった後のこのような煩雑な事務手続きを生前にうちに誰かへ委任しておくことができる制度です。
「死後事務委任」の契約内容について
死後事務が発生する可能性があることを、健康なうちに、なるべく広く委任しておくことが重要です。 死後事務委任を依頼する相手は、信頼できる親戚や知人・友人だけでなく、司法書士・弁護士等の法律専門家なども可能です。 一般的に、親族は死後事務委任契約がなくても、死後事務を執り行うものなので、親族との間で死後事務委任契約を結ぶ場合は、内容に強いこだわりがあるような場合が多いでしょう。また、手続きが面倒なものもあるので、結局受任者が専門家に依頼するケースもあります。 死後事務について委任する内容は、以下のようなことが想定されます。
(1)亡くなった後、親族や関係者への範囲を決めた連絡
(2)行政等への届出(死亡届提出、戸籍関係手続き、健康保険や年金の資格抹消申請など)に関する事務
(3)葬儀や納骨、永代供養に関する事務
(4)家財道具等の処分、遺品整理をする為の権限の委任に関する事務
(5)生前に残っている債務(医療費や老人ホームの費用等)に関する事務
(6)公共サービス等の解約、契約内容変更の手続きに関する事務
死後事務委任契約が起動するころには、当然、委任者は亡くなっておりますので、死後事務委任の内容変更はできません。したがって、死後事務委任契約を作成する段階で、委任事項に盛り込む内容は、なるべく広く、亡くなった後に問題が起こらないようにしておく必要があります。

「死後事務委任」と「遺言執行」の違いについて

「死後事務委任」の受任者と、「遺言執行者」は、それぞれ亡くなった方のために手続きを進める点で同じですが、死後事務委任と遺言では大きな違いがあります。
遺言では、あくまでも財産承継についての記載しかすることができません。例えば、預貯金を息子へ遺贈する、不動産は娘へ相続させるなど、遺産の承継先を決めて記載しておくのが遺言です。
そして、遺言執行者は、遺言の内容を実現する以外のことはできないため、遺言で定められた承継についてしか手続きを行うことができません。 ですが、遺言と違って、死後事務委任は契約なので自由に取り決めることが可能です(財産の承継以外のことに限る)。 自由に決めておくことができる内容としては、葬儀をする場所・方法の希望や、埋葬はどうするとか、お墓はどうしたいなどです。 財産承継の部分に関しては、死後事務委任だけを作成しておいても対応できませんし、遺言だけ書いても、死後事務については委任することができないのです。 つまり、自分が亡くなった後の希望を明確に叶えるためには、「遺言公正証書」及び「死後事務委任契約公正証書」2つの公正証書を残しておくことが重要です。
自分に身寄りがなく、誰にも頼る人がいないという場合、遺言と死後事務委任に関して、専門家である司法書士や行政書士などへ依頼をしておくことで、自分の亡くなった後について誰にも迷惑をかける心配がなく、安心です。

死後事務委任契約の預託金について

委任者が亡くなると、遺体の引き取り・死亡届・葬儀の手配など、すぐにやらなければならないことがたくさん出てきます。 そのため、死後事務は委任者の亡くなった後すぐに開始されます。 そして、それと同時に発生してくるのが、葬儀や火葬・病院代の支払いなど、様々な費用です。このような費用を死後事務委任契約の受任者が立て替えて支払わなければならないとなると大変であり、万が一受任者が支払いを出来ないと、葬儀を行うことができなくなってしまうのです。 そのような事態に備えて、委任者から受任者に対して一定額の金額を死後事務委任契約時に預託しておくという方法があります。 預託金は100万円~150万円程度になることが一般的です。 預託金については、司法書士や行政書士のような専門家へ依頼する場合も同様であり、事前にお金を預託しておき、万が一の時に備えてもらうのがオススメです。

死後事務をなるべく減らすための生前準備について

死後事務については、非常に多岐に渡り、大変手ごわいものです。 もしも、死後事務委任を誰かに委託するのなら、例えば、使っていないような契約があれば解約したり、パスワード類はわかるようにノートに記載しておくなど、なるべく死後事務を減らしてあげるよう心配りが大切になると思います。考えたら生前にやっておけることが沢山あり、終活の一部であると考えられます。

お問い合わせはこちら

当事務所では、「死後事務委任契約」等に関するご相談をお受けしております。特に身寄りの方がいないような方については、遺言執行者とあわせて死後事務委任のご相談を受けることが増えてきました。 小さな疑問からでもご相談をお受けしておりますので、まずはお電話をいただくか、問い合わせフォームよりご予約ください。

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